私には、来月12歳になる息子がいます。幼い頃から空手を習わせており、全国で優勝する程にもなりました。そのおかげで、精神的にも体力的にも強い子です。空手の教えでもあるのか、決して外で喧嘩をして来たり、誰かに空手を使って暴力をふるったり、弱い者をいじめる事をしない子。しかし、ある日我が耳を疑う様な出来事がありました。仕事中、会社にかかってきた一本の電話。それは学校からでした…
お父さん、すぐに学校にこれませんか?○○○君(息子)を迎えに来ていただけませんか?
学校の先生からの電話
こんな電話がかかってきたのは、初めての事です。いきなり呼び出されるなんて、何か大事でもあったのか!?瞬時に心臓の音が高ぶったのを覚えています。
息子に何かあったのですか!?
そう聞くと、先生は言葉を詰まらせながら少し言いにくそうに話します。
…いえ、○○○君がお友達をかなり執拗に殴ってしまい、顔が腫れ上がってしまいまして…
学校の先生からの電話
この言葉を聞き、我が耳を疑いました。今まで一度だって誰かを殴ったりした事の無い子です。空手の試合中は圧倒的な強さで相手から勝利を勝ち取りますが、外で手を上げた事なんてありません。まさか…?まだ信じられない思いのまま、仕事を早く切り上げて学校へ息子を迎えに行きました。
保健室のベットの上でうつむきながら座る息子と、その横でワケを聞き出そうとしている担任の先生がいました。息子の手は包帯でぐるぐるに巻かれ、目には大粒の涙が溢れる寸前で拳をギュッと握って我慢している様子でした。先生から事情を聞くと、殴った理由をどうしても言わず、
僕が悪いんだ。△△君(殴った友達)は悪くない。
この一点張りだそう。埒があかないので、その日は連れて帰って私が家で話す事にしました。そしてその夜、やはり事情を話さない息子についに私も激怒してしまい、怒鳴りました。すると、ずっと我慢していた涙が頬をつたって流れ出し、今まで滅多に泣いた事のない息子が声を上げながら泣き出し、必死に友達を殴った理由を訴えたのです…
お母さん…お母さんが…
そう震える声を整えようと必死に涙をこらえ、息子が話した内容は私も知らなかった事でした。
お母さんが…
お母さんが最後にくれた御守りだったんだ。僕がずっと強くいられるように、最後に作ってくれた御守りなんだ。
それを△△君(殴った友達)がダサくて気持ち悪いって言ったんだ…
でもね…それだけならまだいいよ?
僕が教室に居ない間にハサミでランドセルから切っちゃったんだ。
だから…許せなかった。お父さん、ゴメンなさい。
私の妻、息子の母親は昨年にガンで他界しました。乳ガンからリンパへ転移し、治療を続けていましたが亡くなってしまいました。
私は、息子が妻からそんな御守りをもらっていた事を知りませんでしたが、この息子の話を聞いてハサミで切られたという御守りを見せてもらいました。それは、妖怪ウォッチのジバニャンを再現して、細やかに編みこまれた手作りの御守りでした。泣きながら理由を話し、泣きながら私にジバニャンの御守りを渡す息子の姿とその想いを知り、私はもうそれ以上怒ることは出来ませんでした。それどころか、私もその場で一緒に泣き崩れてしまいました…。
私の教育の仕方は間違っているのかもしれません。もちろん殴ってしまった事は取り返しの付かないダメな事です。でも、どうしても息子だけが悪いとは思えませんでした。暴力はいけません。絶対に肯定できる事ではありません。しかし、何よりもこの気持ちを大事にしたいと思いました。
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